インフルエンサー・マーケティングの落とし穴?Instagramの「にせインフルエンサー」の見分け方
AI要約
【1】日本におけるインフルエンサー・マーケティングの急成長
2016年頃から日本でも脚光を浴び、市場が急拡大しているインフルエンサー・マーケティング。
参入障壁が低いことから、特にInstagramのフォロワー数100,000以下の「マイクロインフルエンサー」のキャスティングをウリとするキャスティング会社、代理店の数も2016年当初と比べても数倍~数十倍に膨れ上がっています(これはもちろん2016年だけで2.5倍とも言われるInstagramのユーザー数の増加とも無関係ではないのですが)。
しかし
市場が拡大すると同時に現れるのが暗い影。
「ステマ(ステルス・マーケティング)問題」は、もともとブロガーの最盛期から問題視されており、タレントがマスメディアでの活動を自粛するほど大きな話題性もあったことから、企業、代理店側も非常に気を使っている事がうかがえます。
現状では「#PR」のような表記だけではたしてこの問題は解決できるものか?など、論争の火種はくすぶった状態とも言えるでしょう。
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そして近年、また異なった形で企業や代理店を悩ませる問題が浮上しています。
それが「にせインフルエンサー」の存在です。
【2】にせインフルエンサーとは?
にせインフルエンサーとは、一言で言ってしまうと「フォロワーを金で購入することでかさ増しするユーザー」のことです。
海外では「フラウド(虚偽)インフルエンサー」と呼ばれているようですね。
専用サイトの他、非公式クライアント、画像保存アプリなどでおおっぴらに販売が行われています。
インフルエンサーは定義上「購買活動に影響を与える」人を指すはずですが、にせインフルエンサーがお金で購入するフォロワーはそのほとんどがbotとなるため、影響は目に見えるフォロワー数よりずっと低くなります(というよりも、ほぼゼロです)。
インフルエンサーをマネジメントするタレントエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)は、毎日応募してくる50から100のインフルエンサーのうち、20~30%がインスタグラムでボットを使っているのが現状だと、米DIGIDAYのインタビューで答えた。
引用元:DIGIDAY「レポート:偽のインフルエンサーに騙されるブランドたち」(2017/8/24)
上記は海外の話題ですが、インフルエンサー登録プラットフォームが散発的に出てきている日本市場も他山の石ではいられません。
なにせ、フォロワーの購入に数千円~数万円投資したとしても、案件をいくつか引き受ければ元が取れてしまうのですから、組織的に行おうとしているにせインフルエンサー・ネットワークが出てきたとしても不思議ではないでしょう。
加えて、確信を持たない限り通報などの手段が難しいというリスクの低さがにせインフルエンサーのフォロワー購入に拍車をかけている可能性も。
「1万フォロワー以上はインフルエンサー」のような浅薄な定義が急速な市場拡大と同時に横行してしまったこともあり、こういったにせインフルエンサーはこれからも増えてくると思われます。
【3】にせインフルエンサーと契約してしまうデメリット
にせインフルエンサーと契約してしまうことにメリットはほぼなく、デメリットだらけです。
すでに述べた「購買活動に影響しない」もそうですが、特に大きいのが「ブランド毀損」のリスクでしょう。
にせインフルエンサーのアカウントは要するにお金目的の「ステマアカウント」。こういうアカウントをInstagramユーザーはすぐに見抜いてしまいます。
インフルエンサーをキャスティングすることで伝えたかったポジティブなメッセージ、コンセプトは反転し、「ステマをやるようなブランド」あるいは「ステマアカウントに騙されるような安っぽいブランド」)という印象を与えてしまいかねません。
こういったリスクはあらかじめ織り込むものではなく、可能な限り排除しなければならないもの。
インフルエンサーの選定には入念に注意を払い、自社、クライアントのブランドモデルとしてふさわしい人物を起用する必要があります。
【4】にせインフルエンサーの見分け方
にせインフルエンサーを見分けるには、フォロワー数はもちろんエンゲージメント数やコメント数などの目に見える数字はあまりあてになりません。
にせインフルエンサーの存在に警鐘を鳴らしたForbesの記事(https://forbesjapan.com/articles/detail/17406 全文は要会員登録)では、
・フォロワー数は多いが、エンゲージメントが少ない
・フォローするアカウント数が異常に多い
・作成されて間もないアカウント
などはにせインフルエンサーの可能性が高いアカウントの特徴とされ、候補となるアカウントのフォロワーを無作為に抽出、数字や不自然な文字列のID、非公開アカウントからのフォローが多くないかをチェックし、エンゲージメント10%を超えるアカウントを起用するよう勧めています。
しかし、日本では事情がやや異なるでしょう。エンゲージメントも購入が可能ですし、逆にエンゲージメント10%を超えるアカウントはタレント、アイドルをのぞくとそこまで多くはありません。特に20代後半~30代に多くフォローされているアカウントは、エンゲージメントが下がる傾向があります。それにフォロワーの無作為抽出も時間がかかるもの。複数名起用の際の候補者リストをひとつひとつ調べていくよりは、ある程度絞った後のチェック法として採用すべきでしょう。
ではその候補者の絞り方(にせインフルエンサーの排除)にはどのような手法があるのでしょうか?
【5】にせインフルエンサーを見分ける方法とは
①実績の有無を確認する
例えば有名ブロガーや読者モデル経験者、公式アンバサダーや資格保持者など。Instagramを始める前から過去に実績がある場合は、フォロワー数の多さに「理由」が存在しますし、やはりそういった過去の蓄積、経験が写真にも感性として表れます。
にせインフルエンサーの多くは自称「モデル」「PRモデル」などを名乗るため見分けはつきにくいかもしれませんが、アカウント名やIDでぐぐり、経歴を調べるくらいは行ったほうが無難です。
②投稿数を見る
Forbesでも挙げられていましたが、10投稿未満、もしくはアカウント開設数週間でフォロワー数1万という数字は(すでに人気の芸能人などを除けば)どんなに投稿する写真にセンスがあっても困難です。
いいね!数がある投稿を境に跳ね上がる、などの挙動も不自然でしょう。
③写真の統一性を感じ取る
代理店にとってインフルエンサーをキャスティングする上でも重要となるのが、インフルエンサーの持つ「世界観」。
1枚の写真を投稿するのに4~5個の加工アプリを経由し、吟味するのは当たり前。この角度でしか映りたくない、自然光の当たらない場所や天気では撮らないなど、インフルエンサーのこだわりは非常に強いものです。
一見して、被写体や加工にそういった世界観の統一性が見受けられない場合、キャスティングは控えるべきでしょう。
逆にそういった世界観と商品、サービスに親和性を感じるインフルエンサーは、ブランドモデルとして非常に大きな効果を期待できます。
④ハッシュタグやプロフィールの使い方を確認する
「インフルエンサー」という言葉も確かに広まってはきましたが、自分のことを「インフルエンサー」と名乗る人はいるものでしょうか?
自分に置き換えると、何となく気恥ずかしいと思いませんか?
大事なのは、一般ユーザーにとってInstagramの投稿は「思い出のアルバム」としての意味合いが強いということ。
その投稿に「#インフルエンサー」や「#ママインフルエンサー」というハッシュタグは不粋、はっきり言ってダサいですよね。こういったハッシュタグでの投稿が多いアカウントは避けるほうが懸命といえます。
その他、投稿に英語やアラビア語のコメントしかついていない、ツールは必要となりますが、フォロワーの性別の割合が偏っている、なども見分けるポイントです。複数の手法を取り入れながら、にせインフルエンサーを候補から排除していきましょう。
海外の記事ですが、こちらも参考にどうぞ。
8 WAYS TO SPOT A FAKE INFLUENCER ON INSTAGRAM
【6】もう一度インフルエンサー・マーケティングについて考えてみよう
にせインフルエンサーもステルス・マーケティングの問題も、熱狂的な市場の拡大に対しフォローできていない、という点では同じ問題です。
にせインフルエンサーの横行やステマで満たされたInstagramは、やがてインスタ疲れやグループ間投稿のみのようなクローズドな使用法を呼ぶ可能性があります。
最後に、こういった論争や問題が起こる時、多くの場合はユーザー不在で代理店とクライアント間の数字合わせの問題に集約してしまいがちなのも一考すべきポイントとして抑えておくべきでしょう。
予算に合わせてフォロワーの数をそろえることにこだわるのは代理店の都合でしかなく、ユーザーモデルとしてインフルエンサーとよいリレーションシップを築くことからまず始めてみてはいかがでしょうか?
ユーザーとサービスのコミュニケーション、というマーケティングの基本に立ち返ることで「インフルエンサーによるコンタクトでユーザーとブランドがどう関わるべきか」という視点からスタートするような、健全な市場となることを望みます。