行列店と心理トリック~ポジティブはポジティブを呼ぶ、インフルエンサーが導く心情変化~

『行列店には(料理の味に関係なく)ポジティブな口コミが集まりやすい』 と言われたら、あなたは信じますか? 社会、コミュニティといった環境下での人の心の動きと、広告の見せ方、作り方について考えてみましょう。 つい先日も携帯会社から牛丼チェーンの無料券が配布され、大行列ができていたというのがネットニュースやSNSで話題になりましたね。残念なことに車の大行列、大渋滞を引き起こしたケースもあり、牛丼チェーン側からはお詫びの文章まで発表される事態へ発展しました。“このケースに関しては”同じ行列とはいえむしろネガティブな評価・口コミが集まってしまうことでしょう。 行列ができれば人の注目が集まり、「何事だ?」と気になったらスマホで検索すればすぐに状況がわかる、便利な時代になったものです。 さて閑話休題、『行列店にはなぜ良い口コミが集まりやすいのか』について考えてみましょう。

目次

AI要約

speaker play pause
speaker play pause
ChatGPT4で要約生成中

インフルエンサーが導く心情変化

『行列店には(料理の味に関係なく)ポジティブな口コミが集まりやすい』と言われたら、あなたは信じますか?社会、コミュニティといった環境下での人の心の動きと、広告の見せ方、作り方について考えてみましょう。
つい先日も携帯会社から牛丼チェーンの無料券が配布され、大行列ができていたというのがネットニュースやSNSで話題になりましたね。残念なことに車の大行列、大渋滞を引き起こしたケースもあり、牛丼チェーン側からはお詫びの文章まで発表される事態へ発展しました。“このケースに関しては”同じ行列とはいえむしろネガティブな評価・口コミが集まってしまうことでしょう。

行列ができれば人の注目が集まり、「何事だ?」と気になったらスマホで検索すればすぐに状況がわかる、便利な時代になったものです。さて閑話休題、『行列店にはなぜ良い口コミが集まりやすいのか』について考えてみましょう。

ネガティブな要素のほうが多い?

なんといっても話題の行列店ですから、並び始めてからお店の中に入るだけでも相当な時間がかかります。お店の中の席の数や働く人の人数、料理の種類などさまざまな要素があるので何とも言えないところですが、30分~数時間にわたって列に並んでようやく着席、なんていうケースも珍しくはないでしょう。
席に着いてからだってスムーズにいくとは限りません。
料理が運ばれてくるまでに時間がかかったり、お水などセルフサービスを取りに行くにも行列だったり、トイレも行列、人がいっぱいいて狭く感じるかもしれません。周りの会話の声の大きさや内容に不快感を覚える場合だってあるかもしれません。

全部の要素を満たすことはできるのか

さて、我慢の甲斐あってついに料理が運ばれてきました。とはいえ味の好みは十人十色、万人が同じように「おいしい」と感じられるような料理はきっとないでしょう。
量に関しても、ある人にとっては少ないと感じることもあれば、また別の人にとっては多く感じるということもあるでしょう。さらに近年ではスマートフォンの普及とSNSの流行により、「インスタ映えするかどうか」というのも料理の評価ポイントの一つになっているといっても過言ではないでしょう。料理の見た目、とは少し違う感覚のような気もします。

このように味はもちろんのこと視覚や嗅覚といった感覚に加え、さらには食べる人の自己顕示欲や承認欲求までお店の評価につながってしまう時代に、それでも『行列店にはポジティブな口コミが集まりやすい』と言えるのでしょうか。

あんなに我慢したんだから・・・!

行列に並び、料理を待ち、写真映りを考えて何枚も撮り、さあついに実食!と口に運んだ料理が自分の期待と100%一致しない、つまりあまり「おいしい」は感じられなかったとき、心の中はどんな状態になるのでしょうか。

このように、長時間並ぶなどの「ネガティブな(ストレスを感じる)経験」があったとき、人の心はそれを打ち消すために他の事柄を「ポジティブな経験」と思い込もうとする、というのが『認知的不協和理論』というものです。

自分はそんなことない!思ったことははっきり言う!という方ももちろんいらっしゃるでしょう。しかし例えば友人や家族と複数で店に訪れ、周りが「おいしい」と言っている中でただ一人「まずい」と言えずに料理と一緒に言葉を飲み込んだ経験があるという人もいるでしょう。会社の先輩や上司に連れて行ってもらった店でまさかまずいとは言えない、ということもあるでしょう。

そして不思議なことに、言葉で「おいしい」と言ってみると何故か最初よりおいしく感じるということもあります。人の感覚は案外騙されやすいのです。それでも自分は!という方はどうぞその鉄の意志を最後まで貫いてください。
こうした心の動きもあり、『行列店はポジティブな口コミが集まりやすい』ということが起こるのです。これは広告を見た人、広告を見て実際に何かを買った人の心の動きも同様です。

日本人は「限定」に弱い?

限定!今だけ特別セール!なんて書いてあったらとりあえずちょっと見てみよう、というのが人の性ですが、これにも同じような心の動きが働きます。例えば限定セールで買ったものが別のお店でさらに安く売られていたら誰だって気分はよくないですよね。でも「失敗した」という心のストレスに対し、たとえば「お店の対応がよかった」と思い込むことでストレスを軽減するような働きをすることがあります。

レビューを書いたら送料無料、次回クーポンプレゼントなどもよく見かけますがこれも心の動きをとらえたうまい作戦だといえるかもしれません。なお、広告関係の仕事をされている方ならご存知とは思いますが、「限定」などの言葉は景表法に触れる場合もありますし、そもそも広告が審査に通らないこともあるので十分注意してください。
景表法については

がわかりやすいですね。ご参考まで

著名人に宣伝してもらう

著名人の宣伝は何故効果があるのか、なんて今更説明することではないのかもしれませんが、インフルエンサーによる宣伝が商売として成り立つ昨今、これも一度考えておく必要があります。広告の値段は「どれだけ多くの人の目に留まるか」で決まるといっていいでしょう。
TVCMであれば視聴率、新聞や雑誌なら発行部数、そしてインフルエンサーはそのフォロワー数です。

そしてTV新聞などのメディアとインフルエンサーには実は徹底的な違いがあります。TVCMならチャンネルを変えてしまうかもしれません。雑誌の広告なら読まずに次のページへ進んでしまうこともあるでしょう。しかしインフルエンサーはそのフォロワーたちの「好きな人」であることがほとんどです。となれば当然、フォロワーたちは興味を持って一生懸命に投稿を見てくれる、というのがとても大きな違いだといえるでしょう。

さて、ここでフォロワーたち、つまり広告を見るユーザーの中にはもう一つ心の変化が生まれます。

AさんはBさんが好きBさんはCという商品が好きというとき、AさんもCという商品を好きになりやすい傾向がある、ということです。

これをバランス理論、P-O-X理論などと呼びます。

これが今インフルエンサーに大きな注目が集まっている一要因であると言えます。「興味を持たせる」ためのものだったはずの広告が、「好きにさせる」広告になったら非常に強いと思いませんか?これを実現できるのがインフルエンサーなのです。人の心の動きをうまく利用(って書くと非常に悪者っぽい感じがしますが)できる広告手法をしっかり捉えながら今後も広告戦略を練る必要があるのです。

お問い合わせ

    記事一覧へ